クロジVol11「かみさまのおかお」

二月ほど前に、先行予約の申し込みしようとしたら前作観劇者限定DM経由だというのに、瞬殺して、入手できなかったチケットを当日券で観てきました。当日券も50人ほど並んでの抽選で5割ほどの当選率だった感じ。くじもので当たるなんて我ながら珍しい。気晴らしに買った宝くじも当たらねえかなあ。

寒風吹きすさび、冷たい雨の降りしきる中当日券列に並び無事当選。チケット入手してから昼飯。油そばを探してみるとちかくに光麺に油そばがあるらしい。最近はチェーン店でもやってる所多くなって、油そば探すのがだんだん飽きて来た。専門店のみに絞るか。
会場入りしてみたら二列目の下手側端にちかいところ。前なのはいいんだけど、端なうえにちかいんでちょっと全景が見えづらい。実際のところ舞台上で役者上手側向くと表情がほとんど見えない。もったいないシーンが少なからずあったのが残念。

ということでネタバレ込み感想。

田舎の閉鎖的な風土と新興宗教の教祖として祭り上げられた現人神の女性を軸に、家族と恋人のお話。クロジの作風的に、この設定が見えた時点で展開とお色気シーンは見えた、のはまあ、そういう作風だと思えば有りなんだけど、なんかここの演出だとそれほど必要でもないエロを無理に突っ込んでる風で正直あんまりいい感じしない。舞台上で無駄に、とはいわんがはだけるを通り越して全裸だすような劇団もあるが、必要性を感じないのシーンはあざとく感じて好きじゃない。でも、まあ人気声優の能登さんのそう言うシーンだと需要はあるんだろうな。あるのか?
全員が程度の差はあれ、どっか間違ってるため、全員が懸命になればなるほど結果が悪化して行く後味の悪さ。どうもクロジの脚本の方は露悪趣味があるように思える。まともに救われてハッピーエンドを期待してると割とつらいかもしれない。でもまあ、最初と最後で事態は全く変わってないのに、吹っ切れた部分があるだけ救われてるのかな。

こっからは個別役の感想。
小さい頃から俗世から切り離して育てられて、異常な状況すぎて情操面が壊れてる女性を能登麻美子さんが演じてるのですが、あの浮世離れした声質と相まって、ナチュラルに狂気を感じるいい演技でした。笑いながら狂った倫理観を無邪気に話してるシーンや小声で謝り続けるシーンとかある意味適役過ぎて薄ら寒いくらい。初舞台ということだけど、正直侮ってたら予想以上にいい演技でびっくりしたわ。

初舞台といえば、主役の似非アーティストな鈴木達央さんもチンピラっぽい薄っぺらさがハマっててものすごくリアルだった。なんというか新宿のガード下とかに普通に寝転がってそうな能登さんと異なる浮世離れ感。というかホームレスっぽい。となりの怪物くんまんま。

今回ダブルキャスト福圓美里さん回を観たんで、福圓さんの女子中学生演技。なんというか、ちょっと歳食ってる感じが否めない。終始ヒステリックな演技で良くも悪くもクロジの福圓さん。そう言う意味だといつものハスッパで調子よくって酒飲みな松崎さんと安定の演技。なんだけど、なんかここら辺はむしろ新しい演技が観たい。
そもそも、クロジってお二人と舞台ごとに人を集める客演集団みたいな部分があるんで、このお二人の演技はなんども見続けてるし、安定感という意味では重要なんだろうし、クロジらしさってのもあるんだろうけど、率直に言って出て30秒くらいでキャラがわかった。うーんいい意味でも悪い意味でも当て書きっぽいなあ。

委員長役の人は、何度か観たような気がするけど、面白い演技するなあ。ただ伯父さんと根っこの部分で反応が同じなんで、違いがいまいち感じられなかった。伯父さんは序盤からあった違和感の正体がラストでわかった。この人も無理して無理し続けてなにが本心か分からなくなってたんだろうってことかもしれない。どうもだれをなにを護ってるのかわからなかったんだけど、多分だれもなにもなくて、過去の姉の亡霊をどっかに投影してそれしか見えてない模様。一番頭がおかしくて一番の元凶かもしれない。
その点で言うとこの全員がおかしい世界で一番普通なお母さんが一番不幸に見える訳で、唯一救われる道がはっきりしてるキャラだった。実際あのなかで唯一救われた人物だった気がする。

思ったよりも長くなってしまったな。