最近読んだ本

  • 黒田勘兵衛

江宮孝之氏著。帰省のとき携帯していった。文庫一冊分なもんで、展開が早い事といったら。子供の頃から初陣までが若干長めだったけど、それ以外は流れるような早さ。なんか全体的に文章が軽いせいか、歴史小説というよりもファンタジーっぽいな。ま、流し読みにちかい。

bookwalkerに配信されてたんで早速購入。この作品のいいところは主人公の性格が割とまともなところだと思う。要はツッコミ役なんだけど、反応が普通の範囲でストーリーを作るというのは難しいものなんだけど、そこんとこのバランス感覚が好み。
えーと、この巻でここまで連鎖的に表れてた敵キャラにケリがついたっぽいんですが、この後になにを出す必要があるんだろう。というか、この流れだと女王が来て最終巻になりそうな勢いだな。主人公がゾンビという点を抜いてもかなり強力になって来てる訳ですが、人間にもどる気なさそうなんだよなあ。家族もどって来たときどうするんだろう。

  • 地底都市<新宿>

魔界都市<新宿>シリーズ最新刊。新宿といっても秋さんじゃなくて十六夜さんの方。秋さん所の話は結局のところ、新宿の内側の話なんで出てくるのがほぼ全員人外なため、日常がおかしいんだけど、十六夜さんところは近未来レベルで日常はあくまで普通の日常。それが新宿という非日常というよりも異常空間とのギャップが面白いと思う。秋さんところは日常の延長の異常だから同じ事象でも印象が全然違う。人がいきなり食われたり、虫に操られたり、異世界に連れてかれたりする日常があれば、だけど。
それはそれとして、こっちのメフィストとあっちのメフィストは白黒の差があって明確に別物なのに、屍さんとか出しちゃうのか。うーん、そういうのってどうなんだろ。まあ煎餅屋とかでたらさすがにちょっと。
読み終わってないから適当な感想。

まだ一巻の途中なんだけど、はっきりいって薄っぺらい本だなあ、というのが第一印象。博覧強記な主人公が事件や犯人に直接あわなくてもすべてを見通すっていう安楽椅子探偵ものなんだろう。でもはっきり言ってその知識とやらが全然すごく見えない。本を読めば分かる、とかネットに載ってるレベルの知識をだらだらと示してるだけで、そこに肉付けがまるで見えない。なんか記憶力はすごいけど知性を感じない。
攻殻機動隊SAC一期のラストで外部記憶を持った物同士の会話があって、なんか説得力のあるような言葉を並べ立ててるけど、あっさりと原典を言い返して淡々と受け流して行くやりとりがある。あれは、お互いに名言や含蓄を競ってるんじゃなくて、それらを利用して相手の本心を引きづり出そうとしているという知識を道具として活用しているところが面白いのだけど、この作品は知識をひけらかすそのものが目的な風に見えて、なんというか感銘を憶えない。最近読んでる京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズの中禅寺秋彦もかなりの衒学的なきらいがあるけど、おなじ知識の披露であっても独自の解釈やら反論を示していてあくまで知識を道具として活用している。けど、この作品だとただただ知識を披露しているだけで、なんというか作者の浅さが逆に透けて見える気がする。売れてるんだ、これ。
ついでに言えばオタクに受けるペダンチックな作品群ってそれを抜いても作品として成り立つというか、無駄な装飾にしか見えなくて正直読みづらいだけの作品に成り下がってるものが多い気がする。昔読んであっさり挫折した気象精霊シリーズとか、無駄に文章増やすために雑学という名の埋め草ネタを入れまくってるだけで、文章とか構成とかはつまらんかったなあ。某4大寄書な「函の中の失楽」も新しく憶えた物を披露したくてたまらない子供のような詰め込み方にしか見えなかったなあ。推理やストーリーに不要な部分が多過ぎて本筋があやふやに見えて、むしろそういうのを一切そぎ落としてストイックに作ってあったら逆に楽しめたような気がする。