劇場版文学少女

preludeこみでレイトショーでも2000円。仕事終わってそのまま自転車で急行。天気はいいけどまだ夜は寒いな。ネットで空席調べてみたらかなりの数が埋まってて実際買った席はあまりいい位置とは言えないのが残念。ということでちょっと首が辛い状況で視聴。

内容としては、普通のラブストーリー、ではなかった。というか普通のミステリくらいにしといてくれたらよかったのに。古今東西の文学を愛する少女、天野遠子と14歳で文学賞をとったものの断筆宣言した井上ミウこと井上心葉が出会って、またミウとして本を書くようになるまでの話。そこにまつわる人間関係と心の闇みたいな。うん、いい話っぽい。けどすこしだけ人と違うのは文学を愛しすぎて本を食べてしまうってことだけか。おい。
本を食うっていう条件がどうにも受け入れられなかった。しかも本しか食べられないっていう時点で人間じゃネエだろ、こいつ。なんでこんなキャラ付けしたんだろ。本好きとかビブリオマニアで十分な感じだったし、本を食う事でなにか特別な認識をする訳でもないというところがなんか気持ち悪い。ipadとかで読ませたらこいつ飢え死にするかな。
というよりも、そこそこ本を読んで来た自分としては本を食うという行為に対して書物に対する愛情を感じられなかった。本というのは一度読んだらおしまい、ということはなく折々に思い出しては手に取るからこその本だし、そのときに傷や汚れは思い出になるけど欠落はあったら作品に失礼だろ。いくら普通に販売されてるとはいえ意図的に欠落させるって、本を使い捨てにする行為と同義じゃねえの?なんかそこらへんがどうやっても折り合いつかなくって食べるシーンも気持ち悪かったが文章の描かれたページを破る行為が終始気に入らなかった。作者の目のまえで単行本を破ってみせたらどう思われるかな。いくら一言一句憶えているといっても文学好きを自称する人間ならやっちゃいかんことだろ。

まあそこに目をつぶれば伏線があったりストーリーも二転三転するよく作られた作品で心の動きが細かく描かれてて観て良かった、んだけど、特別編のprelude観て一気に評価がひっくり返った。文学を愛する以外純粋な、というか無頓着な印象の描き方で偶然の出会いから作り上げた世界観のような形なのに、それが実はすべてお膳立てのある意図的に作り上げられた状況というのが作意的すぎて白けた。なんだそれ、出会いのタイミング自体は偶然かもしれないけど、天野遠子は井上心葉が井上ミウだということを知っていた、という時点でそこからすべて目的のための行動でしかない訳で、自分の都合のために心葉を利用しているだけにしか見えなくなった。なんじゃそりゃ。しかもこのことを心葉は知らないんだからタチが悪い。形はいいけど、これって過激なファンが作者に作品を強要する構図そのままなんだけど。なんでこんな作りにしたんだろ。
個々のシーンやらはすごくいい画なのに全体の印象はかなり悪い。初見では、顎がでかくて顔のパーツが中央に寄り過ぎとかアニメ版kanonかよとか思ったけど、全体的に寄りが多くて目の描写にかなり気合が入っていたとおもう。だけどなんかもう受け入れるとか以前の話なんだよなあ。

どうも最近、ある題材で描かれた作品のなかでほんとにその題材について思い入れなり誠意があるのかわからない作品があるなあ。ハチワンダイバーとか自転車ものとかな。大事な自転車パーツをアスファルトに投げ渡す奴とか路上練習で事故るプロとかなんだそれ。ハチワンの将棋盤面を割って相手が指すのを邪魔するなんて愚の骨頂。棋士にとって駒と盤は戦場であり聖域じゃねえのかよ。漫画家なら自分の筆やらペンをへし折られたり愛用のマウスとかぶちこわされたらどう思うんだ?本当にこの作品に出てくるキャラは将棋や自転車好きなのか?どうせ作品なんて基本的に虚構なんだから気持ちよく読者を騙してこそのプロだろ。

閑話休題
原作読んでみるか。原作では全9巻を90分に押し込んだようなもんらしいし。ある意味原作を読みたくなった時点で作品としては成功かもしれん。