喰霊-零- 十二話「祈焦」

今期一番の出来と思っている作品。これが終わるとしばらく観るものが無くなります。今年としては年またぎでの「バンブーブレード」とかあって、どっちもいいものなので甲乙つけがたい。方向性がまるでちがうしな。
ストーリーとかはそれほど突飛でないむしろよくあるものなのだが、演出がものすごくよかったこの作品、最終回まで見せ場が多くほんとうに毎週が楽しみな作品でした。今回も黄泉が自らの意思を隠して全力で憎まれ役を演じているのが痛々しくってみてられない。なにより一番嘘をつきたくない人間に嘘をつかなければならない矛盾を一切相手に悟らせない強さと誰にも見せない場所で泣き崩れる弱さが黄泉の魅力だとおもう。ほんとに丁寧に作られたキャラクターです。そんなキャラクターを親を殺され、全身不随、声も出ない、婚約破棄、形見の品も取り上げられ、同僚から疑惑の目を向けられた挙げ句、宝物とすら言っていた人物を失うなんて不幸てんこもりに追いつめたものだ。たしかにストーリー的に必要かもしれんけど、できれば救いが欲しかった。それくらいに感情移入したキャラクターでした。とりあえず三途川は地獄行き決定。
最後のシーンは夕方から夜の間に神楽の決意が動いた、と思っていてそれなりに時間の流れがあるんだろうけど、画面だけだとそこらへんの描写薄いかもしれない。まあヘタレで役立たずな紀之が言った「殺して」の台詞になにか感じたのかもしれないけど、そこでちょっとでも神楽の演技があればなあ、と思う。まあ無理か。あと、最後の最後は石に依る神楽への殺意があったにせよ、黄泉の意思がそれを乗り越えて死を受け入れたということだと思う。結局石によって自殺もできないので、なんとか自分を消すことを願ってそれが出来るのが技量的にも意思としても神楽でしか有り得なかったということか。ほんとはヘタレな紀之がやってくれたら、神楽に負担をかけることも無かったはずだけど、奴は意気地なしなんで、神楽に手を汚させることになったのが心残りだったかもしれない。結局神楽が一番大事というのを徹頭徹尾貫いて文字通り命がけな願いを果たした黄泉はほんとに強い女性だった。石を受け入れてしまったことを差し引いてもそこは間違いない。かっこいいキャラがすくない最近のアニメに珍しいかっこいいキャラでした。しんじゃったけど。