原作もの

最近映画界もネタ不足なせいか、原作ものの映画化ばかりが取り沙汰され、というか原作物しか映画化されてないような気がする昨今ですが、それはそれで別にいいんだけど、ドラマの場合漫画原作でも小説原作でもあまりそこを強調していない気がするのに対して、映画だと原作ありなのを強調する気がする。まあ、ドラマだと結局3ヶ月の長期間だったり、テレビなんでとりあえず見たりなんてことが出来るから、出てる俳優なり女優とかで話題づくりしとけば視聴者を集められるとかいう事情と、映画館まで足を運ぶという労力の差だとおもうんだが、もうちょっとドラマは原作に敬意を持って欲しいな。つかドラマ化してやったくらいに思ってるのがみえみえ。オリジナル作れねえ分際でクリエイター気取りかよ。
閑話休題
というわけで、いま話題の「容疑者Xの献身」を読みました。映画は見に行こうかどうか考えてたんだけど、原作物の映画って原作読んでから行くべきかそれとも映画を見てから読むべきかというのは難題だ。だいたい短編でもない限り、読者が得る感覚は小説のほうが上だろう。時間的なものが大部分だが、読者自身の行間の補間行為でいくらでも作品の細部が埋められていくし、そういう導きが出来る作品がいい作品だと思う。映像として見せられると、その場面でキャラクターがどういう表情したか、どういう間をとったかの想像の余地がなくなるし、キャラの顔そのものが決まってしまう。そういう意味では原作を先に読むと少なからずがっかりする部分もあるし、時間的に削られたり、(勝手に)付け加えられたりした部分に不満が出るだろう。そういう意味では原作ものはどっちかにしておくべきだと思う。
とはいえ、読んでしまったものはしょうがないし、とりあえず映画を見に行こうと思っているわけだけど、これを読んでてなんか頭に引っかかる部分があった。それを必死こいて思い出してたらなんとか映像が浮かんできてやっと固まった。
昔、アフタヌーンで連載していた「地雷震」という漫画があって、そのなかの話に、かつて新米警察官が誤射に近い形で容疑者を射殺し、それを先輩警察官がかばって退職するというのがあった。新米は直前に結婚しており、それで退職することが不幸に繋がるとして独り身の先輩がかばうわけだけど、その後その先輩はかなり辛い生活のうえに年老いてしまう。新米はそれなりに幸せな生活をすごしており、そこにその事件を調査することになる飯田響也が現れる。この飯田は優秀なんだけど犯罪者に一切容赦が無く、残虐ではないが必要なら犯人は即射殺。人情味が無いわけではないがそれによって捜査がぶれることなどないある意味冷徹な人間で、あっさりと真相をつかんで先輩のほうに近づく。



こっからネタばれ多い。




それに対して、先輩の方は自分が新米の幸せを護っているんだという思い込みに近い誇りによって、辛い生活を絶えてきたのだが、それを否定されるとして、必死にそれをひたかくしにしようとするが、新米は罪を償おうとして、真相を話そうとすると、その思いは度を越えて新米家族を盾に篭城するという事態になる。
まあラストは読んでもらえばいい*1のだけど、ここら辺で共通点というか引っかかった部分を羅列。


  • ほぼ無償に近い形でだれかがだれかをかばう
  • かばうことでかばわれた方は幸せにかばう方が苦労を背負う
  • 優秀な第三者がそこに介入することでその関係が崩れそうになる
  • かばわれた側が罪の重さに耐え切れなくなる*2
  • *3

完璧なネタばれ含むため、脚注にしました
まあ、実際のところパクリなんて思っていませんし、過去にはいくらでも似たような話があるでしょうから、それについて騒ぐつもりはありません。それ以上に感じたのは、この最初に犯罪を犯した人間の自己満足で結局多くの人間が傷つき何かを失っているわけで、いくら自分の意思で関わったとはいえ、巻き込まれた人についてちっとも配慮がないということ。すくなくとも、もっと早くに言っていればいいことをある程度追い詰められて白状するなんて、罪を軽くするための供述となんらかわりはないという気がする。気が小さくて不慮の事故に巻き込まれた不幸な人、という見方はあるけどはっきりと最初の時点で断っておけばいいものをぐだぐだと罪を重ねさせた挙句、それらの苦労をすべて否定する形で供述か。救われねえな。
まあ、xの方は娘の方が幸せになることを拒否した、というか母親の不義理に耐えられなくなったという点では多少違うけど、結局はすべて自己満足なんだよな。母娘は最初部分はお互いを理解している運命共同体という感覚があったのだけど、それがだんだんと揺らいでいって、母-Xと母-娘と娘-Xの理解がずれ始めたところが一番の問題なんだけどだれも自分のことしか考えていない部分では共通点かな。実際のところ、母親と娘は殺人罪があるとはいえ情状酌量の余地がある上に実際の隠ぺい工作には全く関わっていないんだから、かなり罪は軽かろうしなあ。xの方もその場の思いつきではなく熟慮の熟慮を重ねた上で判断した覚悟を決めた行為を踏みにじられるんだから、あまりにつりあわねえとおもう。これが出所後に両者に救いがあれば別だけど、そこまで書いてないしでどうにもこうにも。
ま、映画みてからもう一回書くか。

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

*1:飯田響也が先輩を射殺

*2:ネタばれ:自己満足というべきものために真相を話す

*3:そのために全ての苦労が無駄になる