乙女企画クロジVol9「エンガワノクラゲ」

なんというか、ここ最近の劇風がシリアスなほうに傾倒して安穏と笑って楽しむエンタテインメントから考えさせるサスペンスとかミステリっぽい作りになって来てて正直言って観て疲労感というか暗鬱というか倦怠感が残るつくりのものだったけど、今回のは多少はしょりすぎてたり描写不足ではあるものの少なくとも登場人物全員が救われる内容だったんで後味のよい作品になってた。
というか、よくある事なんだけど、だんだんと表現が露骨になって行ってるのが顕著。よっぽど狙ってやってるとこじゃないと、初回とかはかなり上品な作りでだんだんとコアやマニアックやエロティックになってったりするものなのだが、ここもはっきり言ってそんな感じ。男女の恋愛とかから始まってだんだんと肉体的なものに寄って行ってる。それがいいかわるいかは客の数じゃなくて脚本家の思想の問題だったりするんだけど、すくなくとも客の数は満杯でした。通路席まで売り切れててだいたい200くらい入ってる。まあ客演が豪華だったしな。
ネタばれは下に書くとして、思ったよりも客演の人の演技がしっかりしてて、おそらく初めて聞いても浮世離れした雰囲気を感じさせる能登麻美子さんの声で前半の中身の籠らない笑い顔とか後半のトラウマのフラッシュバックシーンとかの狂いっぷりとかかなりハマってたとおもう。あとキレたシーンで笑ってた客が居たけどあれはギャグじゃねえよ。むしろ偏執的な欠落だよ、まさかあそこで笑いがでるとはなあ。その笑いのせいで逆に白けたよ。あとは、門脇舞以さんの頭のねじの緩そうなというかまじでちょっとイッテルしゃべり方はちょっと寒気がしたよ。善悪の判断のおかしい精神の病んでる人っぽい明るさを表現してるんだろうけど(言い過ぎかな)なんというかこう、二人とも空虚の塊みたいで人間味のなさが共通してた。
他の人たちはまあ、鴨原さん役の人が独特の口調とイントネーションで重くなりがちな空気を和ませてた。福圓美里さんはキレたときの演技がいつも上手いですな。普通の時はなんというかどうも普通のひとと外れた性格してるんで、普通にうざいです。あと、個人的にちょっと目を惹いたのが、途中で姉弟が触れ合うシーン。あの手の動きがすごく良かった。そういえばそこまでは極力触れることを拒んでいた感じがあったけど、そこまでの伏線だったか。
二時間超の作品でおそらく、だれかのファンで観に行った演劇初めてのひととかには少々重い話のような気もしないではないが、観て損は無い作品だった。今日が初日なんで、途中の映写シーンでおもいっきりミスしてたり、途中何カ所か台詞噛んでみたりとかあったけど、いいものであった。とはいえ、既にチケットは完売、当日通路券も抽選という状況ではもはや突発的に観に行くのは困難極まりないけど。
成仏したと見せかけて普通に居るって、おまえは「ハヤテのごとく!」に出てくるオタク牧師か。


さらにネタばれ感想。開始してしばらくしてから旦那がどうも見えてる人と見えてないひと、というか幽霊みたいなもんかなあ、とおもってたらその通りだった。もうすこしミスリーディングしてもいいとおもったけど、まあ、そこまで引っ張るネタでもないか。フラッシュバックの映像効果はわかりやすいけど多用し過ぎでちょっと興ざめ。フラッシュバックというかバッドトリップだけど。意外と母と娘の関係はほったらかしかよ。ずっとスカートだったのがラストのシーンだけジーパンだったのでああいう心境の変化を衣装の変化で表す手法は好きだったりする。