乙女企画クロジ第五回公演「アニメ大国ニッポン」

ダイレクトメールをもらっておきながらすっかり予約する事を忘れていて当日券で滑り込むという真似をしてまで観劇してまいりました。いかんね、これは。
なぜか知らんけど、一時間ばかりか言えん時間を勘違いして家を出発。予想よりも遥かに短い時間で到着したものの、とっくに開場時間を過ぎていて座れるかどうか不安でしたが、下手側舞台袖近くの座席について開演を待つ。しかし、この席というかこの劇場自体がどんちょもなければ花道もないせり出し式の舞台で、幕代わりにかけられた日の丸の横から舞台が丸見え。開演前の舞台袖を覗き込んでるような感じでどうにも落ち着かないな、これは。まあ演劇部だったころを思い出したりしましたよ。まじで。
公演はシナリオ三本立てのオムニバス形式でしたが、あまりシナリオに一貫性が見られない、というか1、2本目と3本目の脚本家が違うという時点でまとまりに欠ける気がした。実際、前者と後者で劇風に差がありすぎてちょっと終盤に嫌気がさしてきた。まあおそらくだけど3本目の人が普段のクロジの脚本書いている人だと思う。なんというか無駄にお互いを傷つける言い合いを挟んだり、やたらと性にこだわったり、人が死んだりする所とかが前のオムニバス公演と近い気がする。私はどっちかというと、普通の性格の人が登場する舞台か、はたまた異常な世界観の暗喩だらけとかが好きなので、普通の世界で異常な性格というものはあまり好みでないことを再確認した舞台だった。もっとシナリオに練り込みがほしい。
一本目は一番普通な状況だけど、正直言ってそれを演じ切るほど上手くないと思った。公演時間の関係もあるだろうけど、心情が変わるだけの説得力があるわけでもないし、主人公が能天気な割に本質を見抜く、というセンスがあるようにも見えないので結局なにが原因で変わったのか分かりにくい。自己解決だけならいままでひっぱる理由もないということで、もっと2人の会話に集中したほうがいいと思った。
二本目はまあ、位置的に字幕が見えねえ、とかはあったけどそれよりなによりどいつもこいつも無責任だと思った。結局全員が自分勝手に動いてる風に見えてあんまり共感できん。無理矢理病院に連れて行くなりするべきだけど、言いっぱなしで行動につながらない。演技的にすごくいいんだけど、感情移入できないんで上っ面にしか感じられなかったのが惜しい。一本目と同様に心情の変化が唐突すぎる。そこを丁寧に描いてほしいんだけど40分じゃ難しいかな。
三本目はまあ、どうにもこうにも説明不足。そういうとこを吹っ飛ばして楽しむ事が出来ればいいんだけど、それは無理だった。まずなぜその役目を姉が負っているのか、爆発の範囲はどれくらいなのか。まずこの二つをどうにかしてくれ。めんどくさいからブレス機で潰すとかできないのか。解体は?焼却は?殺したら核燃料はどうなるのか?もうそこらへんがまるでほったらかしなんで何をやっても薄っぺらい。しかも終盤に整理するだけのために自殺するかのような展開。もうなにもかもが描写不足。折角の福圓さんの恒例の髪振り乱しの錯乱演技も説得力が薄い。もったいないなあ。面白くなりそうなネタなのに。あとは姉の人は声がきちんと作れていないと思う。どんなに感情を爆発させて声を張り上げるシーンであってもあんな細い声になるくらいならきちんと声を作った方がいいと思う。リアルと本物は別なんだから。
ということで、あまり演技に没頭できない欲求不満が残ったのは残念ですが、久しぶりの観劇は楽しかった。また観劇の趣味を復活させようかな。