黄色い花の紅

出張中いろいろと移動やらなんやらで時間があったので、一冊読み終えた。これも戦う司書とおなじスーパーダッシュ文庫新人賞をとった作品。文章力というか構成力では戦う司書の方がちょっと上だとおもう。

黄色い花の紅 (スーパーダッシュ文庫)

黄色い花の紅 (スーパーダッシュ文庫)

二人の女性を中心にして、片や成長物。もう片方はそれを見守るといったながれではあるけど、実際は共依存の関係からの卒業を取り扱ったものに近い印象を受けた。わかりやすく言うと駄目なヒモ男が女性から独立するも女性の方が前の関係に未練たらたらな感じ。自分で書いててわかりやすいけどやな表現だ。
主人公の一人である紅花ちゃんとその保護者的な奈美恵の二人がメインだが中盤から奈美恵さんは入院して舞台からしばし降板、そうしてからの紅花の成長っぷりが見ものなんですけど、正直これを成長というのは抵抗がある。親の言うことに従って守られる立場を務めるというのも一つの道だし、これが自発的に時間をかけての選択ならまだしも、ほとんど黒田という人物の個人的な志向に左右されてほぼ強制的に選ばされたものに見えた。まあ本人がそうと自覚していないし、納得するのなら問題ないけど結局はエゴの押し付けだよな。この場合の一番の被害者は父親だ。
それとは別に奈美恵さんの話だけど、紅花が母親を見てるという表現の辺りから共依存の関係に見えていたのだけど、居酒屋のシーンではっきりした。紅花が奈美恵さんを母親と見ていたのと同じように、奈美恵さんは紅花に銃を持つ以前の自分を見ていたんだろう。力のない少女がいやおうなく暴力で支配されるという現実を自分の力で守ってやることで、自分を満足させていただけであって、それが紅花であることは必ずしも重要でない。というかそういう現実が大嫌いなだけというのが近いかもしれない。きわめて個人的理由であるからこそ無茶も行える訳だし、それによって救われるものもある、けどこの状況ってやっぱり共依存の関係だと思う。
それもあって、ラストに繋がる部分での独白は心に染みるものがある。父親と奈美恵さんという枠から飛び出した現実は紅花にはすばらしいものかもしれないけど、やっぱりさびしいものも感じさせるな。


あと、この本の特徴としてあげられる銃や戦闘シーンの細やかさは秀逸です。ただ、最後の戦闘はいくらなんでも強すぎ。どう考えても勝てるはずがない。というか勝って殺人を犯させる必要はなかったと思う。だいたい勝つのならそれに対してのリアクションがあってもいい。
それと直前に読んでた戦う司書のせいで、敵が神溺教団の肉かとおもいましたよ。絶対そう感じる奴他にもいる。